| 堆肥(コンポスト)の作り方
いろんな人がいろんな堆肥の作り方を提唱しているけれど、私たちは土壌微生物と作物と人間にとって良い堆肥の作り方とは、摂氏60度以上に燃え上がるホットな堆肥と、堆肥専用のミミズを使ったミミズコンポストだと思っている。 失敗しないために窒素分の不足や通気の悪さが理由のこともあるけれど、堆肥作りに失敗するよくある原因は水分の多過ぎ。適切な水分量は堆肥塚全体の60〜65%。材料を手で握って絞ったスポンジくらいの量という指導書もあるけれど、この目安は材料が全部細かく均等に裁断されたときにしか役に立たない。
堆肥の材料は見た目より水分を多く含んでいる物が多い。苅ったばかりの草や畑の野菜の残渣は多くて95%の水分を、生ゴミは普通85%以上の水分を含んでいる。草や野菜の残渣は苅った後、一日くらい外に広げて少ししおれさせたくらいがちょうど良い。家畜の糞も乾燥ぎみの方が扱いはラク。水分の調整の仕方は次の通り。 緑の材料と茶色の材料堆肥の材料は「緑の材料(窒素分多)」と「茶色の材料(炭素分多)」を混ぜ合わせて、全体で炭素:窒素の比率が25〜30:1とするのが適当と言われている。どの材料がどちらの成分をどのくらい含んでいるかは、インターネットでも「バーチャル・コンポスト」や「ロデールのコンポスト計算機」のホームページなどで調べることもできる。簡単な目安としては、刈ったばかりの草や野菜残渣、緑の葉などはかなりの窒素分を含む。家畜(もしくは人間)の糞や生ゴミ、アルファルファとかの豆類の植物も同じく窒素分が多い。逆に、枯れた落ち葉や茶色の藁、おが屑、新聞紙や段ボール、小枝など茶色系の物は炭素分が多い。
秋の天気が良い季節に乾いた落ち葉を集めておけば、いつでも堆肥を作るときに使えて便利。水を加えすぎてしまったときも、茶色ものの備えがあればそれで調整できる。フレッシュな緑の材料と違い、乾いた茶色の材料は長持ちするから、私たちは時々遠征して近所から落ち葉をたっぷり集め、大きなゴミ袋に幾つか蓄えて使っている。茶色ものが多過ぎたときにはどうするか? その調整の仕方はもう少し後で。 堆肥作りのポイント1.水分は多過ぎより、少な目の方が失敗しない。 堆肥の枠を作る堆肥作りは規模が大きい方が苦労が少ない。ボリュームが大きい方が熱が集まり発酵が進むし、材料の種類が多い方がより豊かな堆肥ができる。ただ、それは何トンもの有機物が出る農場の話。大きな農場の場合は、底辺2.5メートル、高さ1.5〜1.8メートルくらいの横から見たら台形の山を長く積んで堆肥を作る(ハワードのインドール式コンポスト)。
大きなゴミ袋の底と脇を切り開いてできたシートを金網の筒の内側に張る(洗濯ばさみで仮止め)。上手な人はゴミ袋の底を切っただけで金網の筒にピタッと当てはまるビニール筒を作ることができるかも。これは乾燥を防ぐため。 空気を通すために底上げした土台を作る。煉瓦を90センチ四方の四隅と真ん中においてその上に丈夫な堅い金網を置く。網目が大きいようだったら、目の細かい金網をかぶせる。この台の上に内張をした金網の筒を乗せてできあがり。中に混ぜた堆肥の材料をフォークで積んでいく。 材料を積み終わったらゴミ袋シートの上の方を軽くふさいでふたにする。翌日くらいに堆肥が熱くなって蒸気が出てきたら内張を広げ、乾いてきたらまたふさぐ。 動物の侵入が困るようだったら、同じ金網でふたを作って止めておく。屋根のない所に作る場合は、別のゴミ袋か傘かトタンなどで雨を防ぐ(古い傘の持ち手をとって堆肥に突き刺し屋根にしたことも)。 この筒を2つか3つ、自分の農場から出る材料の量に合わせて作り、時間差で積んで順番に使っていくと、完熟堆肥を常備することができる。 材料を混ぜて積む堆肥箱を1回で満杯にできる量の材料があった方が良い堆肥をつくりやすい。もしそれほどの材料が1度に集まらない場合は下の「ひとまとめ」を参照。HDRAの「コンポストの作り方」のページには、どんな材料をどう扱うべきか、詳しいアドバイスが載っている。基本的には、一度は生きていた有機物の残骸なら堆肥の材料になる。ポイントは:水分が60〜65%になること、通気性良く空気をたっぷり含むこと、ほぼ中性(pH7)かやや酸性(pH6-6.5)になること、そして炭素:窒素比率が25〜30:1となるように材料を集める。(カンをつかむまでバーチャル・コンポスト、ロデールのコンポスト計算機とか参考になるかも)
全体の一割くらいまでは、小枝とか頑丈な茎とか堅い大物が混ざっていても大丈夫。分解されないだろうけど、堆肥塚の中で材料が詰まるのを防ぎ、通気性を保ってくれるから。 まずは乾いた茶色の材料を地面か床に直径1.5メートルくらいの煎餅型に均等に広げる。22リットルくらいのバケツを使って2杯分。それから同じ大きさのバケツ1杯分の緑ものをその上に均等に広げる。これを2回繰り返して、茶色、緑、茶色、緑の4層を作る。
材料がある分だけこの5層煎餅(茶色、緑、茶色、緑、粉類)を2〜3層重ねる(全体の割合を考えて材料を用意しておかないと、中途半端に終わってしまうから要注意)。 全部きれいに重ね終わったら、この煎餅の片隅からフォークで層を縦に削り崩し、フォーク1杯分ずつ材料をかき混ぜ、フォークですくって堆肥枠の中に入れる。枠(もしくは筒)の中に均等に広げ、堅めすぎないよう、でもふわふわすぎない程度に積んでいく。こうやってまず層を作りそれから少しずつ縦に削って混ぜることで、材料を均等に混ぜることができる(全体を一度に混ぜようとしたら大変!)。1すくい混ぜて入れ終わったら、2すくい目に進む。こぼれ落ちた細かい材料をシャベルですくって枠の中に均等に降りかけながら、材料全部を堆肥枠の中に積んで行く(かき混ぜ→フォーク→シャベルの繰り返し)。 通気性が大切 有機物を分解する微生物、とくに堆肥作りに活躍する好熱性微生物が活発に活動するためには、たっぷりの酸素が必要。しかも堆肥は微生物の活動で熱くなるから、塚の下から空気が充分入るようにしてやった方が効率よく通気される。 地面がよほどふわふわ空気を含んだ所だったら、その上に直接堆肥を積んでも大丈夫だけれども、できれば底上げして、上の金網台のような空気が通る台の上に堆肥を積んだ方が効率よくなる。
材料を全部積み終わったら、内張のゴミ袋か何かで軽くふたをしてお終い。空気がこもらないように、でも雨がかからない様に覆いをしておく。 これでお終い。翌日に堆肥塚は摂氏50度以上に、翌々日くらいには60度かそれ以上に熱くなるはず。熱が冷めて40度以下に落ち着いたころ(積んでから1〜2週間後)に一度枠を開いて材料全体を切り返す。もしくはそのままさらに2〜3週間放っておく。 いくら待っても熱くならないときは塚を崩して、水分か窒素分か通気性かを調整し直す。 長い温度計で塚の真ん中当たりの温度を調べながら、堆肥が発酵する様子をチェックする。温度計がなかったら自分の手を入れてみて、熱くてじっとしていられないようだったら大成功! 自家製堆肥活性剤「堆肥塚に加える最高の液体はHousehold Compost Activator!」と言う人たちがいる。自家製堆肥活性剤。無料で簡単に作れて、衛生的でミネラルやビタミンたっぷり、しかも窒素分もたっぷりのコンポスト・アクティベイター・・・なんのことはない、おしっこの事。 ひとまとめ
家庭菜園など小さな畑では、堆肥塚を一山積むだけの有機物を一度に集めるのは難しい。むしろ野菜の残さや生ゴミが毎日チョビチョビでてしまう。有機ゴミができるたび堆肥塚に加えるのも可能かもしれないけれど、たぶん水分がたまって空気穴をつぶしてしまうか、上手く発酵しなくて冷たいままか、少しだけ暖かくなるか、どちらにしても効率的ではない。できれば畑の残さも生ゴミも、堆肥塚一山分になるまで腐らせないように貯めておく仕組みを作った方が良い。 動物の糞の活用良質の堆肥を作るのに必ずしも動物の糞はいらない。なかには動物の糞を極力避ける人もいる。でも私たちは手に入るのなら動物の排泄物はなるべく加えた方が質の高い堆肥ができると思ってる。
肉食動物以外なら、どんな動物や鶏たちの排泄物も堆肥塚には大歓迎。堆肥作りで有名なバイオダイナミックの人たちは牛の糞が良いと言っている。私たちは香港のランタオ島で群をなしている野良水牛たちのトイレに行き、糞を山ほど拾い集めて使っている。効果は覿面。動物性の糞は材料全体の五分の一くらいあれば充分。でも四分の一以上にしない方がよい。 化学物質だらけの人工飼料を食べさせられ抗生物質漬けにされた家畜の糞はなるべく避けたい。たぶん発酵して化学物質も分解されて堆肥はできると思うけれど、せっかく役立ち者の微生物たちに増殖してもらいたいときに、抗生物質漬けの家畜の糞は加えたくはない。 ふるい分け裁断機を持っている人は、堆肥塚を積む前に材料を全部細かく裁断し、積んで一週間たったらもう一度裁断して、また一週間後に裁断してお終い。裁断機を持っていない人(私たちを含む多数)は、できあがった堆肥をふるい分けた方が良い。
ふるいを通った出来上がり堆肥は、箱に詰めて2〜3週間ほど寝かす。畑に加えるときは表面5〜6センチくらいの浅いところに軽くすき込む。後の仕事はミミズたちがやってくれる。畑にミミズがいないって? 大丈夫、堆肥が土壌微生物を増やして土の中の生態系が豊かになれば、ミミズたちもすぐやって来るから。 |
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