有機菜園のススメ
〜オーガニック・ガーデニング〜
「有機農は単なる中産階級のホビーではない。より大きな環境運動の一部であり、持続可能な社会のために必須の技術だ。私は有機農なら世界中の人を養うことができると信じている」- Jackie Gear, Executive Director of the HDRA, Britain's Organic Association
「有機農法は世界人口を養うための鍵だという事実が、随分長い間抑制されており、今では信じがたいほどになってしまった」「バイオ技術は我々を惑わせた--伝統農法が今でも最適な技術と調査報告」2000年8月24日『ガーディアン紙』
http://www.guardianunlimited.co.uk/
Archive/Article/0,4273,4054683,00.html
「有機農法は世界の大人口に充分な食糧を生産することができるとイギリスの科学者たちは述べている」「有機農法は世界人口を養える」1999年9月14日BBCサイエンス番組にて
http://www.purefood.org/Organic/orgfeedworld.cfm
「有機農が世界人口を養えるかって? 持続可能な農法は既に世界中の農業界にゆっくりと確実に広がり始めている」エセックス大学環境と社会センター代表ジュール・プレッティ氏。持続可能な農法の静かな革命の神話と現実を調査したコメント。
http://members.tripod.com/~ngin/article2.htm
「ローテクな持続可能農法が自然的な防虫対策と施肥方法で化学薬品より高い効果をあげ、世界中の貧しい農民の収穫を70%以上も増やしてるというと、エコ活動家の夢かと思われるが、これは夢ではない。このことが事実であることを大規模な調査結果が実証した(16ページ参照)。これを読めば、21世紀の世界人口を養うためには遺伝子組み換え技術が必要だと思いこまされている人も目が覚めるだろう」「より緑な革命」2001年2月3日『ニューサイエンティスト』
http://www.newscientist.com/editorial/editorial_227629.html
「手づくり企画」のオーガニック・ガーデン
「手づくり企画」の有機農園 |
香港のひなびた砂浜の上に、私たちは有機菜園を作った。セメントに囲まれた畑や小さな竹かご、大きな竹かご、古い風呂桶の中にレタスや豆や南瓜やいろんな野菜が元気に育っている。この奇妙な畑は、30センチ四方のコマごとに違う野菜を植える「スクエアー・フット・ガーデン」と、いろんな容器の中で野菜を育てる「コンテナ・ガーデン」を組み合わせたもの。どちらも単純だけど狭い場所で空間も時間も最大限活用する便利なシステム。もとは都会に住む人向けに考え出されたシステムだけど、都会でも農村でも土地なし金なし時間なしの人が自分が食べる野菜を効率的にたくさん育てるときに役立つ仕組みだと思っている。ちなみにこの畑の一部は、ベランダもない香港の高層ビル19階からやって来た。
元気に育つ野菜たち |
スクエア・フット・ガーデンでは16平方フット(約1.5平方メートル)の畑に平均130株の作物を植え、1人が毎日食べるのに充分な量の野菜を育てることができる。1.5平方メートルの場所がなければ、8コマの箱庭菜園を2ヶ所作ったり、1コマ1コマいろんな容器に分けてもかまわない。
「スクエア・フット・ガーデンは、子供から老人まで、小さい畑から大きな畑まで、初心者からベテランまでに適した、簡単だけどどんな状況にも応用できるシステムだ」と、考案者のアメリカ人技術士、メル・バーソロミューは言う。『Square Foot Gardening』
キース:セメントを壊して砂を掘り畑を作っている所 |
もともとビーチハウスには砂浜の上にセメント台がどんと構えていただけで畑も土もなかった。セメントの割れ目から木が一本細々と生えていて、前の住民が何か植えようとした古いタイヤや風呂桶がいくつか残されていただけ。土はほとんど雨で洗い流されていた。
でも、今は全然違う。木枠で囲んだ畑の中には腐植土たっぷりの肥沃な土が蓄えられ、いろんな種類の野菜が何百株も青々と育っている。島の人たちがゴミ箱に使う大きな竹かごの中にバナナが育ち、ドラゴン模様の壺にパパイヤの木が生えている。 古い丸太を崩しながら生い茂るサツマイモと竹ゴミ籠に生えるバナナ | 地中に埋めた風呂桶の中から桑の木が伸び、もう背丈が3メートルを越えた。南瓜は風呂桶や竹かごから古い梯子で作った柵をつたい屋根まで伸び、サツマイモはセメントの上に捨てられていた古い丸太の隙間から青々と葉を広げている。いろんな青菜や豆やピーマンが1コマごとに区分けされた畑や、1平方フットの小さな竹かごの中で育っている。野菜だけじゃない。今では農園にハチや蝶や蛙や鳥が集まり、バランスの取れた生態系がセメントと砂の上で息づいている。
肥沃な土も手づくり
私たちは、都会や途上国に住む畑も土もない人たちがどうやったら自分たちが食べる安全で栄養たっぷりの農産物を育てられるか、その方法を考えようと思ってこんな奇妙な畑作りに挑戦した。土がなくても生ゴミや身の回りの有機物をコンポストして肥沃な土を自分でつくることができる。堆肥作りは全然難しいことじゃない。ちゃんとした方法に従えば子供でもだれでも家の中でも、衛生的な堆肥作りができることは世界中で実証されている。(堆肥づくりについてはこちら)
ビーチハウスの前で堆肥塚を切り返すキース | 猫の額ほどでも土地がある恵まれた人たちは、これから紹介する方法を使ってもっとたくさんの野菜をもっと少ない手間で育てることができると思う。
アパート住まいでもベランダや屋上があれば、コンテナ・ガーデンを作れば問題ない。ベランダも屋上もない人は窓際か、ちょっとエネルギーがもったいないかもしれないけれど電灯を使ってでも野菜は育てられる。
どんな状況でもゴミから腐植土を作り、家族と自分の健康な生活を支えるために安全で栄養たっぷりの食べ物を育てることは無理じゃない。土を作ることは自然の大事業に協力すること。そして自然はちゃんとそのお礼をしてくれる。「屋上やベランダや窓際で、驚くほどの量の作物を育てることができる。場所は小さくても収穫と報酬はとても大きい。」Chuck Crandall and Barbara Crandall, 『Movable Harvests』1995
なぜ食べ物を自分で育てることにこだわるかって? それはこのページを最後まで読んでもらえれば納得できるはず。
学校でも
卵はパックから、グリーンピースは袋から出てくるもの。海には切り身の魚が泳いでいる。。。冷蔵庫の中から出てくる食べ物しか見たことがない子供たちがそう思ってしまうのも無理はない。でも、それでは食べ物の意味も環境の意味も理解できない。
ヨーグルトカップや牛乳パックに苗を植え替える緑 | アメリカでは国中の学校にスクエアー・フット・ガーデンを紹介する運動が広まっている。インターネットのホームページやメーリングリストを使い、プロのアドバイスを訪ねたり体験談を紹介したりしている。子供たちにとっては「1コマの自分の畑」がなにより自慢だとのこと。
イギリスでも有機農の研究機関であるHDRAが新しく「学校有機農ネットワーク」を始め、学校で有機菜園を作るためのアドバイスや情報を提供している。
http://www.hdra.org.uk/schools_organic_network/index.htm
私たちも効率的な食べ物の育て方や有機ゴミから土を作る方法を、訪れた先々の学校やコミュニティー・ガーデンや途上国の農村でも、必要があった場合に紹介していきたいと思っている。畑の形は四角でも丸でもかまわない。みんながおいしく栄養たっぷりの野菜を充分食べられるために、その人のその状況に適した畑を一緒につくって行きたい。
途上国の農村で小さな畑が大切な理由
途上国の農村になぜ自家用の家庭菜園が必要なのか? ちょっと不思議に聞こえるかもしれない。でも途上国の農村で大きな畑は売るための換金作物を育てるところ。いろんな援助や開発協力で大きな畑の収穫を増やしたとき、農民家族の栄養状態は逆に悪化してしまった事例がある。多くの途上国で畑の世話は女性の仕事。換金作物用の畑が大きくなれば女性たちの仕事も多くなり、
隙間なく生える野菜は、自分たちで生きたマルチになって土を守っている | その分だけ家族が食べる野菜の世話がおろそかになってしまう(これも女性の仕事だから)。作物を売ったお金で買える食べ物は栄養分が偏りがちだし、それすら満足に食べられるほどお金は入らない。
スクエアー・フット・ガーデンは、アメリカの技術者が考え出した最小限の場所と時間と手間で最大限の収穫を得る方法。だから、上のような途上国のお母さんたちが家族のための食べ物を育てる場合にも役に立つと思っている。簡単だけど、いろんな植物やいろんな状況に応用が利く方法だから。
いろんな技術を組み合わせ、一番効率的な方法を考える
「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」の他の企画も見てもらえればわかるように、私たちは古いもの新しいもの、東洋も西洋もあわせて、とにかく安くて効率的な方法をいつも探している。農作業ははるか昔から受け継がれてきた古い技術の集大成。商業的農業ではかなり近代化が進んでしまったけれども、家庭菜園では新しい知恵と工夫が加えられながらも古くからの技術がまだ受け継がれている。
伝統技術が必ずしも正しいわけでもない。そこから学びながら、私たちは科学的なバイオ管理や微生物の仕組みなども調べている。
お隣の七伯爺さんも私たちの畑をお気に入り |
ランタオ島では、中国の古い農法で細々と畑を耕している人たちがまだいる。近所のおじいさんやおばあさんは、私たちの畑を見て初めは上手くいくはずがないと笑っていた。セメントの砂ばかりのところに肥料も殺虫剤も使わずに作った畑だったから。でも、今ではみんな私たちの畑をながめて見事なもんだと誉めてくれる。
スクエアー・フット・ガーデンの仕組みは簡単。だれでも一目見ればその仕組みを理解できる。地面を1平方フット(30 x 30センチ)のコマに区切って、陽の当たる手前に小さな野菜、真ん中に大きな野菜、一番奥に柵を作って蔓で伸びる野菜を植える。
畝状の畑は機械向け。これは円状に配置するバイオインテンシブ農法。共栄植物の組み合わせや作物の大きさ、収穫時期を考えて配置を考えるため、スクエアー・フットよりずっと複雑 |
円状配置で最大の収穫 |
一株の周りに必要な隙間だけの円を描き、円と円の隙間に別の作物を植えて場所を詰める |
隣り合わせのコマには違う野菜を植え、囲った畑の土には踏み込まない。収穫が終わったコマから次の野菜を植えていく。
作物ごとの配置図と植え付け・収穫カレンダー、野菜やハーブの好き嫌いを組み合わせるコンパニオン・プランツ、そして有機農にそったスクエアー・フット・ガーデンの作り方、これだけあれば大抵の状況に適した畑が作れるし、わからないことがあればインターネットで他の体験者に尋ねることもできる。
畑の地力をつける
有機菜園のポイントは、たくさんの野菜を元気に育てるために充分肥えた土をつくること。畑でも箱庭の中でも、深さ30センチくらいの肥沃な土があったほうが良い。
だから、畑づくりを紹介するとき、私たちは堆肥の作り方を併せて紹介することが大切だと思っている。どこでも思いがけない所に堆肥づくりの材料は転がっているし、堆肥つくりは有機農の基本だから。
例えば、訪れた農村で二種類の堆肥塚を作るとわかりやすいと思う。一つは半トンくらいの材料を裁断機で細かく砕いて微生物による分解を速めるスピード塚。材料の表面積が大きくなるから微生物は一斉に材料を食べ始め、堆肥塚は一日足らずで摂氏60度まで熱くなる。
一週間して温度が下がったらもう一度裁断機にかけて積み直し、また一週間くらいたったらできあがり。材料の姿形もない、森の土の匂いがするふかふかの真っ黒い堆肥を使って、スクエアー・フット・ガーデンを2セット作ることができる。
裁断機なんて持っていない人がほとんどだから、もう一つの堆肥塚は動力を使わない積み上げ式で作ってみせる。材料が大きい分だけ分解に時間がかかるけれど、翌々日くらいに温度が上がり2週間くらい後に切り返し、積んで一ヶ月くらいで立派な堆肥ができあがる。
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